青色申告書を提出している法人に欠損金が発生すると翌年以後9年間において生じた所得と相殺する制度の繰越控除制度があります。これとは別に、青色欠損金についてはその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下、「還付所得事業年度」といいます。)に納付した法人税額の還付を請求することができる繰戻還付という制度もあります。
【適用対象法人】
・期末資本金の額が1億円以下である普通法人(期末に大法人との間にその大法人による換算支配関係がある普通法人を除く)
・普通法人のうち資本又は出資を有しないもの、その他一定の法人
※大法人とは、資本金の額が5億円以上の法人をいいます。
【適用要件】
次の要件をすべて満たしている法人
(1)還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること
(2)欠損事業年度の青色申告書である確定申告書を提出期限までに提出していること
(3)(2)の確定申告書と同時に欠損金の繰り戻しによる還付請求書を提出すること
※欠損事業年度とは、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた事業年度をいいます。
【還付金額の計算】
還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額/還付所得事業年度の所得金額)
※分母の金額は、法人が還付金額の計算の基礎として還付請求書に記載した金額が限度で、分母の金額が限度となります。
【還付金額の所得計算上の取扱い】
当規定により還付金の還付を受け、又は還付を受けようとする金額を未納の国税等に充当する場合には、還付を受け又は充当される金額は各事業年度の益金の額に算入されません。
【税理士からのワンポイント】
実務上、欠損金の繰り戻し還付の申告をした場合には、税務調査が行われます。
と言いますのも、一旦国庫に納められた税金を還付する場合に、無審査でそのまま返還する訳にはいかないためです。税金を取り戻すタイミングは1年だけですので、今回の赤字が適正であるかどうかを見極めるための税務調査ということになります。
もうひとつの注意点は、この制度は国税(法人税)にしか適用がありません。つまり、地方税である法人事業税には、赤字を9年繰り越せるという点においては同じ制度がありますが、繰り戻し還付という制度については、法人事業税には適用されませんので、ご注意下さい。