欠損金の繰越控除

法人の所得計算は、それぞれの年度の益金から損金を控除して計算され、プラスになれば法人税を納め、マイナスになれば法人税は納めません。マイナスになる年度は、基本的にお金が少ない法人や負債が多いかと思います。そして、その翌年にプラスになったからといって税金を納めないといけないと法人の資本維持が難しくなると考えられます。このようなときに、プラスになった年の前年以前に生じたマイナスがあればそのプラスと相殺する制度があります。それが、欠損金の繰越控除という制度です。なお、青色申告書を提出している法人を前提に説明します。



【制度の内容】

 内国法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(すでにこの規定により損金の額に算入されたもの及び欠損金の繰戻還付の計算の基礎となったものを除く)があるときは、その欠損金額は、その各事業年度の損金の額に算入されます。
だだし、欠損等法人が特定支配日直前に事業を営んでおらず、特定支配日以後5年を経過した日の前日までに一定の事由に該当するときは、その該当することとなった日の属する事業年度(以下「適用年度」と言います)前の各事業年度において生じた欠損金額については、繰越控除の規定の適用はありません。



【適用要件】

 当該規定は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、その後においても連続して確定申告書を提出し、かつ、欠損金額の生じた事業年度の帳簿書類を保存している場合に適用します。



【繰越控除される欠損金の繰越期間】

 平成23年12月税制改正により、平成20年4月1日以後に終了した事業年度について繰越期間は9年間とされました。これに伴い、帳簿書類の保存期間が9年間に延長されました。なお、欠損金額が生じた年度によっては、繰越期間が異なります。

※平成13年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金の繰越期間は5年、帳簿書類の保存期間も5年間です。

※平成13年4月1日以後に開始した事業年度から平成20年4月1日前に終了した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は7年、帳簿書類の保存期間も7年です。


【繰越控除される欠損金額の限度額】
 
 繰越控除される欠損金額は、次の区分に応じそれぞれの金額となります。

(1)普通法人のうち期末資本金額が1億円以下であるもの(期末に大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人その他一定の普通法人を除く)その他一定の法人・・・この規定適用前の所得の金額を限度

(2)(1)以外のもの・・・この規定適用前の所得の金額の80%を限度

【税理士からのワンポイント】
 累積赤字を抱えている会社は数多くありますが、この欠損金を7年あるいは9年経過してしまい、切捨てとしてしまっているケースをよく見かけます。
会社が赤字続きであれば、しょうがないと思われるかもしれませんが、そうとも限りません。

 このような赤字会社は、金融機関からの借入だけでは、資金が不足するため社長の個人資金を借りているケースが非常に多いです。この金額も会社によっては数千万円~数億円まで計上されていることもあります。
 ところが、この社長からの借入金は、社長個人から見れば会社に対する貸付債権ですので、社長に万一のことがあった場合には、相続税の課税となります。
 
 つまり、ほとんど回収の見込みがつかない貸付債権にもかかわらず、相続税の課税対象となるのです。
これを解決するための方策が、この期限切れ欠損金の有効利用です。

 具体的には、欠損金の有効期限が切れる前に、社長が会社へ貸し付けている債権の一部でも債権放棄をします。(確定日付をとっておくことをお勧めします。)これにより会社は、借金の棒引きを受けたことになりますので、債務免除益として収益計上され欠損金も切り捨てられずに有効に利用することができます。